会社の評価制度について考えたこと

以前に、「ADDress多拠点生活 宇城(熊本)宇城の夜、ふたつ、自分なりの答えを見つけた。その②仕事編。」というブログを書きました。

この時は、宇城の拠点で考えたことを書こうと思ってたら、想像以上に長くなってしまったという結果で、その中の「会社の評価制度」について書いた部分だけを、少し、整理し、改稿しました。

新しい内容ではないので、以前にご覧いただいた方は、読んでいただく必要はないかもしれません。

評価制度って、そもそも少し変だとずっと感じていた

私は、自分の会社の評価制度について、変な制度だなあ、時間がとられる割に、本当に会社のためにも、個人のためにも全然なっていないなあ。と思っていました。

評価制度は、会社業績や組織文化に大きな影響をあたえる仕組みだということは、間違いありません。ただ、それを上手に取り入れられている企業がどのくらいあるのか、ということについては疑問です。

ほかの会社のことはよくわかりませんが、わたしが働いていた会社では、単年度の業績のKPIのみが評価対象になっていました。いわゆるコンピテンシーについては、毎年360度評価が行われ、その対象者が、自社のバリューに会った人物であったかを評価として測る機会があるのですが、主にそれは昇格の検討時に利用されていました。

なので、基本的には業績評価が対象年度の査定対象となります。

でもよく考えてみると、人が1年で、成し遂げられること、そして会社業績に影響をあたえられることなんて、あまりないんじゃないかなと思います。

単年度の会社業績の中身を紐解けば、下記の3つのことが影響しているといえます。

  • 該当年度の外部環境
  • 過去のアクションの結果の積み重ね
  • 単年度のチームや自分の活動

だから、「評価面談あるある」では、外部環境がたまたまよかった、または過去の人、別の人のアクションの結果が業績、成果に関係していた、それにもかかわらず、結果は「自分の行動や努力による成果」となります。逆に外部環境が悪い時は「天候が悪かったから/コロナによる影響」になりますし、内部環境も言い訳の材料にすることが可能です。

例えばセールスの部門であれば、「製品が悪かった、企画が悪かった」と「悪い結果は自分のせいではない」みたいなことになり、実際の「業績や成果」が、実は、誰の成果なのか、何の成果なのかわからないということはよくあります。

小さな企業が成長軌道にのるステージでは、多くの「経験豊富」な転職者が入社してきます。その中には、とても優秀な人もいますが、普通に優秀(とは言えないかも)な人たちが、「大きな会社にはあったけれど小さな会社にはなかったいろいろなシステム(ハードもソフトも)」を、あれがない、これがない、と持ち込んで、実装することが仕事になります。Aに資金(労力)を投入すると、Bの効果がでる、というわかり切ったことをして、それだけで「成果を出した」ということになります。

これはクリエイティブではなくてただの作業ではないのか。ものすごく高い給与レンジの人たちが、クリエイティブに頭を使うことなく、お金だけ使って、成果を出しているように見せている。そしてうまくいかなかったときには環境のせいにすることが可能。

自分のObjectiveについては達成したよ。すばらしいでしょ。いい評価がもらえるはずだよね。あれも、これも、それも、こんな困難があったけれど、やり遂げることができたんだ。

あるいは、

外部環境、もしくは内部環境に問題があるから、結果がうまくいかなかったんだ。それは、Objectiveの設定時には、想定できなかったことだし、自分のせいじゃない。できることはすべてやった。そこは考慮してほしい。

という懸命なレポートを作るということが、目的になり、この無駄な作業に膨大な時間をかけている。

私が所属していた会社がよほど特異な会社でない限り、これが現在多くの会社で行われている評価制度のリアルなのだと思います。

このような評価制度の結果に表れるもの、こと

こういう評価制度の結果にあらわれるのは、短い期間でできること、評価の対象としてわかりやすいことを高い優先順位において仕事をする人が増えることです。

どんな時代も、ビジネスは不確実性のもとにあり、その条件下で、社会に対する価値を創造するのが企業の役割なのだとしたら、と考えてみましょう。「価値」が1年で作れるわけはなく、そもそも会社が会社である所以は、長期間にわたり皆の知を結集し、価値を創造することです。

そう考えると、従来の評価制度が、「会社に来て何もしない人を減らす」ためには、有効かもしれないけれど、会社の価値創造に結び付いているとは言えないのではないか、ということが私の主張です。

会社が、ミッションやバリューを定め、それに基づいて行動する人を育成し、それを評価するという仕組みは、その会社に合った人がどういう人なのかを示すのには、効果があります。でも、それを「価値創造」をする行動へと導くところまでには不十分です。

繰り返しますが、従来の評価制度は、「会社に来て何もしない人を減らす」ということに関しては有効な仕組みだということ。ただそれだけのものです。

だから私は、若くて優秀なスタッフが、自分の成果を認めてもらいたくて、懸命にObjective Sheatに文字を埋め、面談に臨もうとすることが、なんだか気の毒でたまりませんでした。Objectiveとして定めているものは本来の価値創造ではないし、そのシートの記入や面談の過程にも、創造性や、創造性を育むプロセスは含まれていないからです。

そして私自身が、それらの結果を以て、上長にプレゼンをし、彼らの好待遇を勝ち取らなくてはいけない仕事を無意味だと思っていたし、心の中で大嫌いだと思っていました。(いや、心の中ではなく、かなり態度に出ていたかもしれない)

もう少し本音を言えば、ABCDEという評価段階があったら、A評価をもらえる人はほとんどいないし、Eの評価をもらう人は、もう会社にいなくてもいいと思われる人です。

BCDの評価、多くの人はC評価に分類されます。若くて優秀で成果を認めてもらいたくて、ものすごい時間をかけてObjective Sheatを記入し、C評価をもらう多くの人たちは、その評価の後に、モチベーション高く働くのでしょうか?

価値とは何か?

価値は、付加価値とは違います。

付加価値は、一定期間の総生産額から原材料費・燃料費などと減価償却費を差し引いたもので、人件費・利子・利潤の合計になるものですから、測定が可能です。

本来の価値というのは目に見えないし、秤にかけることができないものです。無理やり分類しようとすれば、機能的な価値とか、情緒的な価値となるのでしょうが、結局それも「誰にとっての価値」なのかによっても概念や大きさが違ってきます。

私の考えとしては、ミッション、ビジョンは、単年度の評価制度には役立てることはできない。というもので、その理由を説明したいと思います。

会社のミッション、ビジョンについて

先述したように、社会に対して価値を創造するのが企業の役割なのだとしたらミッションやビジョンは大切です。

そして、企業が定めるミッション、ビジョンみたいなものは、ふわっとしていればふわっとしているほど未来の価値を作り出しやすくなるということになります。

わかりやすくするために、トヨタのグローバルビジョンと、UNIQLOのミッションを比較したいと思います。*正確に言えばビジョンとミッション、そしてバリューは、階層の異なる理念ですが、わかりやすい比較のためだということをご承知おきください。

笑顔のために。期待を超えて。

これはトヨタのグローバルビジョンです。この価値の対象は、きっと「この世のすべての人に」ですよね。そして普遍の価値です。

服のチカラを、社会のチカラに。

これはUNIQLOのミッションです。この価値の対象は、「服を着る人、服を必要とする人」です。

トヨタは、車を製造する企業から脱却しなくてはならなくなっているという環境のもとにある、一方UNIQLOは、当面の間、この世のすべての人が服を着るということが前提となっています。

両社とも環境や状況が違うので、単純な比較することが自体は意味を成しませんが、抽象度、という観点だけから見ると、トヨタのほうが抽象度が高く、未来の価値を作り出しやすいといえると思います。なぜならば、人々がもし、服を着ないで過ごすという未来がきたら、UNIQLOはその先の価値を作り出すことができないからです。

この比較は、トヨタとUNIQLOのどちらのビジョンがいいか、ということではなく、どこまでの未来を見ているのか、ということの比較です。
*でも二つのサイトを見ていたら、思ったことがすごくたくさんありました。これもまた別のブログに書きたいなあと思いました。

抽象度が高ければ高いほど、既存の概念の枠を超えた価値を想像できる可能性が高くなります。未来の価値は自分たちの思考の範囲に超えたところにあるからです。

評価制度が価値を作れない要因/評価制度を作っている人が実は一番わかっていない(のでは?)

従業員が日々、創造的な仕事に取り組むようにするためには単年度の業績評価が役立たないということはすでに書きました。

会社が売上を上げ、利益を出していくためには、「社員がさぼらずにちゃんと働いてくれるようにすること」という最低限のレベルの担保と、「未来の価値創造に対して頭と体を使ってくれること」への投資のふたつの概念が必要になります。

前述したように、業績に基づく単年の評価制度は最低限のレベルの担保になりますから不要とは思いません。しかしながら、企業が、会社とは未来価値を創造する場所であるということを明確にし、それに相応する仕組みを持たない限り、社員が創造的な価値を作り出すことはありません。多くの社員が「最低限のレベルの担保」である評価制度ために、膨大な時間と労力を使ってしまう現実と向き合わなければならなくなります。

ビジネスが不確実性の元にあるという原則を考えると、リーダーがひとりで、未来価値を創造することはできません。未来を創造する能力を持つ人は、ディレクターや、マネージャーではありません。もっと若い人のはずです。

余裕のある大企業が、アイデアや、社員のやる気を引き出そうと、様々なプロジェクトに若くて優秀な人を登用している例は多くありますが、多くのプロジェクトは「おままごと」程度の成果しか作れていません。

また、権限移譲を進め、現場の人、アルバイトの人などに裁量を持たせて働いてもらうことを推進しているケースもありますが、これも上記と同様に、「素人の仕事」であり、「商店レベル」の仕事になってしまいます。「会社」であることのスケールメリットを活かせていないということです。厳しい言い方になりますが、こういう権限移譲について、私はユーザーとして迷惑極まりないと感じることもしばしばです。

優秀な社員をたくさん抱えながら、このようなことが起きるのを避けたいのであれば、先述したように「社員がさぼらずにちゃんと働いてくれるようにすること」という最低限のレベルの担保と、「未来の価値創造に対して頭と体を使ってくれること」への投資のふたつの概念を持ち、単年の評価制度は、社員のさぼりを防ぐための仕組みなのだということを、設計側がよく理解しておく必要があると私は思うのです。

そして評価される側である従業員は、一般的な評価制度というものは「一応公平性が担保されたうえで、評価がなされていて、不当なことはないんですよ。」という免責のための仕組みなんだということを頭の片隅に入れておくことが必要なんだと思うんです。

価値を作り出し、価値を作り出すための方法には正解がないと思います。大事なことは、今ある仕組みが、価値を作り出すための要素を持っているのか、ということを真に問うということです。

計測できない「価値」を計測するには?


価値は数値化できない、ということを書いたので、数値化できないことを、どうやって、管理していけばいいのか。ということですが、私は価値に対する信用のスコアリングしかないのかなと思います。会社だと少し、恣意的な要素が入ってしまうかも、という懸念はあれど、デジタルチャイナや、Uber、Airbなどの例をとっても、意外に信用性は高いのではないかなと考えています。

身近な例、そして個人的な見解ですが、私が今ADDressで生活していて感じることは、良い人はすぐに評判になるということです。(悪い人も、かもしれません)

代表的な例は家守さんですが、素敵な家守さんはすぐに評判になり、みんながその家守さんに会いに行きたくなります。そういう家守さんがいる家は安心して過ごすことができたり、楽しく過ごすことができるからです。

現在、家守さんは数値としてのスコアリングはされていないのですが、会員の心の中では、かなり正確にスコアリングされているのではないかなと思います。

私の提案

今まで長々といろいろ書いてきました。ここから私の提案を書きます。

ポイントとしては、評価制度を昇給のレベルスケールにするのをやめること長期的な価値をつくりだせるような仕組みを持つこと。即ち、仕事の中に余白、や行間を持つことで価値を創造しやすくなるという内容になっています。


評価制度・給与システムを下記のように設計します。

◆原則全員1年間の契約社員にする

  • 給与は、役職及び職種によってマーケットや会社のバリューに基づいて、決定し、「人」ではなく、JOBによってのレンジを決定しておく。*会社の状況に応じて、イレギュラーも設定するが、それはあくまで会社と個人の契約として、公開されることはない
  • 昇給は原則無し。*会社の利益を全員に賞与として均等に(または給与レンジ別にパーセンテージを決定し)配分する
  • 毎年自分の仕事の範囲を明確にし、Objectiveを設定し、年度で振り返る、評価が普通以上であれば次年度の契約を更新する *更新ができない場合は特別補償をし、契約更新しない。(社員の最低限のレベルが下がらないようにする)
  • バリューに基づく信用のスコアリングを行い、適切なトレーニング機会、昇格機会、異動などの措置を取り、能力を活かせるようにする。(価値を創造しやすくする)
  • 昇格についてはオープンポジションにして、挙手制、または推薦で決める
  • 給与については市場との整合性を取り、適宜変更される

◆価値についてのレベルを明確にし、上記2.3.の評価に取り入れる

<価値のレベルスケール>

  • A.現在価値 今日現在その企業が顧客に提供する価値
  • B.近未来価値 3年~5年後を見据えて(予測内の環境変化や、競合分析の結果を能性を鑑み、)それに備えるため、または更なる顧客への価値の提供
  • C.将来価値  5年から10年後見据えて(環境変化がある可能性を鑑み)そのときに提供できる価値 
  • D.将来予測無し、で、こういうことがあったらいいんじゃないか、というふんわりとした価値

*A.Bについては、「プロフェッショナル」としてのレベルを保持することを要件とし、actionプランの策定提案→承認→実行→としObjectiveを設定、実行、結果測定をする

*C.については、「提案のみ」または「実施方法を含めた提案」を行う

*D.については、ただの夢、でも冗談でもいい

<評価の仕方>

  • A.BについてはObjective管理
  • CDについては、バリューに基づく信用のスコアリング

このように評価制度、給与システムを設計すると、ABのような、単年、また近年に向けての仕事(創造性低)からDのふんわりとした価値(創造性高)について全員が取り組むことになり、ABの実務が得意な人材、CDの創造性ある人材を切り分けて発掘し、教育機会を増やしたり、強みを活かす仕事のアサインができるようにもなります。

<上級管理職の役割>
上級管理職は、チームをマネジメントすること以外に、このCやD.の提案の中から、芽があるものを見つけだし、発展させる能力が必要となり、その職責を持つことになります。このようにすると、高い給与をもらって、頭を働かさない管理職が会社に留まることを防ぐことができるはずです。

管理職は部下に対して愛情を持ち、心の広い人格者として、育成することが大切であることは重要です。部下も優しく、大きな心で受け止めてくれる上司がいると安心です。でも、それだけでは不十分です。

部下を本気にし、クリエイティブな仕事をしてもらうには、上司が部下の提案を見極め、良いエッセンスを加えてあげて、ものすごく高い価値に変換させる。それが良い管理職の仕事だし、そういう経験を積み重ねることが、上司、部下の双方にとって、本当の意味での仕事のやりがいを見つけることにつながっていく。

若く優秀な社員は、そういう経験を1度でもすると、その後は一人で、仕事を回していけるし、良い管理者になっていくこともできるのだと思います。

まとめ

今日、起業した友人と話をしていて、彼女が言っていたことが印象的でした。

彼女が自分のビジネスを軌道に乗せようと奮闘している横で、様々な人が、「評論家」として、いろいろな「アドバイスという名の余計なお世話」してきて、本当にフラストレーションが大きい、というものでした。

私はすでにビジネスの世界からは、離れたところに身を置いており、今日私が書いたことはそれこそ、「部外者のお気楽な理想論」なのかもしれません。

でも私は一方で、自分の考えを持つことを大事に思っています。

会社では、その時の諸事情や、利害関係者があって、理想論だけをかざすことはできないし、そもそもその権限がなければ、提案すらできません。

私は過去に社会人大学院に通い、経営学の学位を取りました。その時すごく楽しかったのは、いろいろな会社のケーススタディを通して、私だったら、こうしたい、こんなこと絶対やらない。とか、思ったことを思ったように「言ってみることができる」ということでした。

3月の上旬に書いたこのブログを、1か月置いて、読み返してみたときに、やっぱり自分の主張には変わりがないな。と思いました。

今日は雨が降っていて、たまにはこういう日に、ゆっくり自分の考えを整理するのは、いいことですね。

今夜もよい夢を見られますように。

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