美術展 安野光雅 追悼展 第1期 繪本 平家物語  in 島根(津和野)

津和野滞在中に、安野光雅美術館を訪れました。想像以上に素晴らしい美術館でした。

安野光雅美術館について

安野光雅美術館は、JR津和野駅のすぐ目の前にあります。

漆喰の白壁と赤色の石見瓦が印象的な、和風建築の大変素敵な建物です。内部は学校を模していて、回廊や、教室や図書室があります。

絵画の展示のほかに、プラネタリウムも併設されているようです。

中庭には、安野氏がお好きだった、山茱萸の木が植えられています。お花が咲いたらかわいらしいでしょうね。

安野光雅美術館 TOP

安野光雅氏について

安野光雅氏の絵本は、子供のころに、誰しもが見たことがあると思います。安野氏の名前を知らなかったとしても、絵を観たら、「見たことがある」と感じるはずです。

津和野に美術館があるのは、安野光雅氏が津和野の出身だからです。

これは、↑津和野の風景を安野氏が描いたものですが、津和野という土地は、この絵の通り、やさしい風景を感じられる場所です。

盆地故に、夏は暑く、冬は寒い。年間の気温差が50度近くあるという津和野。そして、降水量も多い地域ですから、気候条件は厳しい場所のはず。それでも、ふわふわの山や、清らかな川や、小さなかわいらしい家々。そういうものがとても、やさしい景色をつくりだしています。

安野氏の優しい絵のタッチは、この故郷の景色や色が影響している、そして彼の繊細でありながら好奇心のある心の眼が、ちょっとひねりのある、愛らしい作品を創ってきたのでしょう。

安野光雅氏は科学、数学、文学にも造詣が深く、このことが、多くの子供向けの絵本を作ったことの理由にもなっているのだと思います。

津和野からは偉人たくさん生まれている

津和野は、後に偉人となる人物が数多く、生まれ育っています。

森鴎外はその一人であり、安藤光正氏は、森鴎外が翻訳したアンデルセンの「即興詩人」という本に心服し、大人の繪本として出版しています。

わたしが、はじめて森鴎外訳の『即興詩人』に出会ったのは、20代半ばのころでした。(略)心地よい文章の音が、ますます耳に残っていくのがわかりました。そして、はっと悟るところがありました。「文語体の美しさとはこれか」と、わたしはその秘密に触れたのです。(略)これは鴎外の『即興詩人』に触発されて、主人公アントニオの足跡をたどったものです。つまりそれは、アンデルセンの足跡でもあるのです。しかし、鴎外は一度もイタリアには行っていないのです。わたしは、この物語に描かれた現場に立ってみて、鴎外の翻訳の的確さになんども驚いたものです。――

(絵本 即興詩人 単行本 まえがきより・安野光雅)

森鴎外の翻訳は「原作以上」と評されることもあり、安野光雅氏に大きな影響を与えたことがわかります。

安野光雅氏の絵には、イタリアの街並みを描いたものが多く、私はそれらの絵もとても大好きでした。

安藤光雅 追悼展 繪本 平家物語(2021年6月9日まで)

昨年(2020年)、亡くなられた安野光雅氏の追悼展として、繪本 平家物語 が行われていました。前述したように、安野氏は文学に造詣が深く、平家物語のほかにも、三国志、シェイクスピアなどを題材に描いています。

7年の歳月をかけ、完成されたという、繪本 平家物語の展覧会は、追悼展の第一期の開催であり、このあとこれらの大きな題材の作品展が4期まで続く予定のようです。

本会場には原画79点が展示されています。

安野光雅氏の絵は、上から見下ろした構図、即ち対象物が小さく、細かく、可愛らしく描かれているのが特徴で、この平家物語も、本当に繊細に描かれていて、細かい部分までを楽しむと、79枚もの原画をみるのはエネルギーが要ります。

安野光雅氏らしい、可愛らしい作品を堪能する一方で、「卒塔婆流し」という作品が印象的でした。卒塔婆流しは、とても悲しい、切ない、苦しいお話しなのですが、白く立つ波と、小さく描かれた人がこの厳しい環境をよく表しており、悲しみや、無念さの伝わる絵です。

私は、安野氏のどちらかと言うと、やさしい、幸せな気持ちや、切ないような種類の絵が好きですが、この卒塔婆流しに描かれた、強い心情みたいなのは、ちょっと珍しく感じて、気に留まりました。

また、「月見」という作品も、平家物語という、騒然としたエピソードが続くなかで、ちょっと優しい気持ちにさせてくれる作品であり、好きでした。

この繪本 平家物語と、同時期で「ふしぎなえ」の展示も行われています。この展示室では、ユニークな安野氏の表現がいっぱいの世界観を観ることができます。

まとめ

安野光雅美術館、また行きたいです。

美術館の中には、ミュージアムショップがあるのですが、かわいいポストカードがいっぱいあって、どれを買おうかすごく悩んでしまいました。

私は、美術館を訪れたことで、安野光雅氏の更なるファンになったし、津和野のことも好きになったので、津和野の山々、そして人々の暮らしが描かれたポストカードを買いまいした。

大切にします。

今夜もよい夢を見られますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました