矢板から益子への旅の途中に、宇都宮美術館で 「ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ」 を観てきました。今年観た美術展の中では一番よかったかもしれない。
私の場合、美術展に行くとき、展示作品の中に強烈に印象に残る作品があると、全部見終わった後に、可能であればその作品に戻って、十分に、思いっきり堪能して、それから美術館を出ることが多いのですが、今回の美術展は、展示してある作品そのすべてに魅了されました。
何度も会場を行き来しながら、「ずっとここにいたい。帰りたくない」と思ってしまったくらいです。こちらの展覧会は、再入場可能なので、一度休憩してからまた観るのもいいかもしれません。
私は今回あまり時間がなかった(とはいえ、3時間も滞在しました)ので、同時開催しているコレクション展 第1回・コレクション展 Permanent Collection PartⅠ「生きられた場所/生きられる場所」を観ることができませんでした。こちらもよさそうな展覧会だったのに残念です。
宇都宮美術館には初めて訪れたのですが、とてもいい美術館でした。
宇都宮美術館について
宇都宮美術館は「うつのみや文化の森」の中にある美術館です。美術館の周囲を約26ヘクタールという広大な森に囲まれているため、まさしく森の中の美術館です。
深い森林の中に大きな芝生の広場があり、そのすぐ近くに低層の美術館がひっそりと建っています。
美術館内にはJOIE DE SENS というレストランが併設されており、これがまた森の中のレストラン風で素敵でした。今回時間がなくて立ち寄れなかったので、また機会があったら訪れたいです。
ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ
いきものたちはわたしのかがみ は、ミロコマチコさんの2011年以降の作品にフォーカスを当て、作家の今を見せる展示会です。200点近い展示があり、見ごたえがあります。
ちょうど訪れた日時に、「担当学芸員による見どころ解説」が行われていて、この展覧会開催における経緯の説明や、この美術館で行われたライブペインティングの録画を観ることができました。
今回の展示は4つのブースに分かれています。
- 近作
- 挿画・アートディレクション
- 絵本原画
- 山形ビエンナーレ
- 新作
中央の会場には、山形ビエンナーレで展示された立体物が再現されていました。*この三次元の展示はミロコさんの作品ではなく、ブレーメンという会社が製作しているそうです。
近作のお部屋では、では2016年から2019年の作品が展示されています。ミロコマチコさんらしい、画面いっぱいに大きく対象物を描く手法、独特の色使いを堪能できます。この色使いは、色の組み合わせが絶妙に素敵なのですが、私はモノトーンの作品、たとえば、「まっくらやみの花」とか「オナモミ」とか、も大好きです。
そして、やっぱり私は、挿画、アートディレクションの作品がとても好きでした。挿画や、アートディレクションは、作家自身がゼロから創り上げるものとは異なり、一つ一つのプロジェクトに目的があります。その趣旨に沿って作家がそれを創り上げると、それは、コラボレーションになります。
私の勝手な想像ですが、作家は自分の作品を制作する時には、全身全霊をかけて、命を吹き込むのだと思います。一方で、こういった企業とのコラボレーションのようなものを制作する時には、少し肩の力が抜けて、その作家が持っている「遊び心」のようなものが現れる。そんな気がします。そしてそれが私の感性を刺激するんじゃないかなと思います。
新作のお部屋には、山形ビエンナーレでの作品を刷新した「からだうみ」という立体作品がありました。この作品は、展示されている作品の中を通ることができます。
作品の中を通ると、本当に絵の中に入ってしまったような、とても、とても不思議な気持ちになります。この感覚をいつまでも味わっていたくて、ゆっくり展示の中を歩きました。ものすごく不思議な気持ちになるので、展示を出てから、またもう一度戻って、遠くから展示を眺めていたら、係員の方が、コロナウィルス感染防止のために、使用不可になっていた椅子を空けてくださって、(混雑していなかったので)そこからじっくり作品を眺めることができました。そして、あらためてもう一度、作品の中に入り、やっぱり、絵の中に入ったみたいだ。と思ったら、じんわり涙が出るほど心が動いてしまいました。
いきものたちはわたしのかがみ は、11月29日(日)まで。そのあとほかの美術館(刈谷市美術館 高知県立美術館 神戸市ゆかりの美術館 あの素敵な横須賀美術館*本来この企画は横須賀美術館の企画だったようです)を巡回するそうです。
もう一度観に行きたいです。ほかの美術館で観たら、また違う気持ちで観られるかもしれない。
いい一日だった。
今夜もいい夢を見られますように。
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