李禹煥美術館を観るために、香川県の直島にやってきました。
李禹煥は、ヨーロッパを中心に活動している国際的評価の高いアーティストで、李禹煥美術館は、建築家・安藤忠雄とのコラボレーションによるものです。
私は、何年か前に、女優の中谷美紀さんのドキュメンタリーを観て、李禹煥氏とその作品を知ることになりました。
彼女が 李禹煥氏の熱烈なファンであり、彼のヴェルサイユ宮殿での展示を紹介し、そして日本の彼の自宅を訪ねて対談するというものでした。
フランスのヴェルサイユ宮殿では、毎年、現代美術の最先端で活躍する作家を招聘し、長期の展覧会を行っています。2014年には李禹煥氏の作品が展示されました。その際、李氏は50回近くヴェルサイユに通い、天才庭師アンドレ・ル・ノートルが作り上げた、歴史ある完璧なルーヴルの庭に、どのような展示をするかの模索を重ねたそうです。
李禹煥氏の作品の素晴らしさはもちろんのこと、そのドキュメンタリーの中では、女優として、演技に完璧を求める中谷美紀さんに対して、「作品というのは、いったん出来上がってしまったら、それはもう作り手の手を離れ、あとは観る人にゆだねる、そういうものである」と言っていたのも印象的でした。
私は絵画以外の実物の作品を観たことがなかったので、ずっと直島に来てみたかったのです。
李禹煥美術館
李禹煥美術館は、李禹煥初の個人美術館です。この美術館の開館にあたり、小さい規模の美術館であることを希望したとのこと。
柱の広場、照応の広場、出会いの間、小間、沈黙の間、影の間、瞑想の間の7つの展示場所があり、24点の作品の展示があります。
柱の広場
柱の広場に関しては撮影が可能でした。
ヴェルサイユの展示を再現したような「無限門」2019年
「無限門」は長さ25メートル・幅3メートルのステンレス板と、同じ長さ・幅、素材のアーチ、そしてそれを支えるように置かれた2つの自然石からなる作品です。実際にアーチの下を歩いて「無限性」を感じることができるという作品です。太陽の光によって、ステンレス版の反射が変わります。
関係項では塔の影が鉄板の真ん中を通っています。いい時間に観ることができました。
美術館内へのアプローチも素敵でした。
小間・沈黙の間・瞑想の間
美術館の内部は撮影は不可能でしたが、
私が好きだったのは、小間の「対話」2013年という作品、また、沈黙の間の「関係項-沈黙」2010年という作品、そして瞑想の間の「対話」2010年、でした。
小間の「対話」2013年は、小さなカンヴァス(22×27㎝)に、ほんの一筆の絵の具で表現された作品です。眺めているとなんだか引き込まれてしまうような作品でした。小さな作品ですが、大きなインパクトを感じる作品です。
沈黙の間の「関係項-沈黙」2010年 は鉄板と自然石、が絶妙なバランスで配置され、ライトとともに「静けさ」を感じさせる作品です。私は美術作品を観るとき音が聞こえる感じがするのですが、実際には音が聞こえるというよりは、「静けさ」を感じるというほうが正しいかもしれません。しーん。とするような感覚を味わうことができる作品でした。
瞑想の間の「対話」2010年では実際に、靴を脱ぎ、作品を眺めながら瞑想の状態でウォールペインティングされた作品を鑑賞することができました。ずっと座って作品を眺めていると、目の錯覚で、作品の色が変化したり、部屋の構造から、人の出入りで空気が反響するような不思議な感じがします。美術作品の前で瞑想。最初はちょっと落ち着かないような気持になりますが、少し経つと「無」になることに慣れてきます。心を日常から離して作品と向き合えるいい時間でした。
まとめ
ということで、憧れだった李禹煥美術館に来ることができました。ずっと夢に見ていた美術館。期待を裏切らない素晴らしい場所でした。来られてよかった。
今夜もよい夢を見られますように。
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